水泳のプロスポーツ化を真剣に考える

水泳のプロスポーツ化を真剣に考える
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なぜ水泳はプロスポーツにならないのか?それには以下でも記載するように、いくつかの理由があると思います。ただし、最近では賞金が出る大会があったり、北島選手や萩野選手など、企業からのスポンサーで生活できる(であろう)選手が少しづつですが、以前よりはでてきやすい環境になってきたと思います。

一方で、まだまだ「泳ぐことでで生計が立てられる人」はオリンピック金メダリストレベルなど、ほんの一握りの選手しか存在しないのが実情です。

日本の水泳業界をさらに盛り上げ、レベルアップさせていくためには、水泳選手が水泳に安心して専念できる環境をどんどん整えていって欲しいと考えています。

①水泳に”プロ”がないこと=レベルアップの阻害

日本の水泳業界では、以下のような構図ができあがっています。
つまり、これからもっともっとタイムも伸び、近い将来に日本を代表するかもしれないようなスイマーが、「将来の生活」ことを不安に考え、途中離脱してしまうのです。

水泳がプロスポーツとして存在しない
 = 水泳で生計を立てることができない 
 = どこかで、水泳を辞めなければならない
 = 本当に実力のある選手が途中で見切りをつけて辞てしまう
 = 日本のスイマー全体のレベルが一定以上、上がらない

これは、本当にポテンシャルのあるスイマーが、ピークを迎える前に引退してしまう、つまり日本の逸材候補を逃してしまう可能性が高いことを示唆しています。

②水泳に”プロ”がない理由

いくつかの理由が考えられますが、以下の点が主に挙げられると思います。

①選手寿命の問題

サッカー選手や野球選手を思い浮かべてもらうと、10代から活躍選手も多いですが、30代でもっとも脂がのっている、という選手もたくさんいます。ごくまれにですが、イチロー選手のように50歳近くまで現役を続ける選手もみられます。
一方で、一般的に水泳選手のピークは男性で20代前半、女性で10代後半〜20代前半といわれています。実際に、バルセロナ五輪で14歳で金メダルを獲得した岩崎恭子選手のように、女性は10代でピークを迎える選手が多いのも事実です。

つまり、男女ともに、大学卒業後にピークをもってこれる保証がないのです。プロ水泳選手となる以上は、できるだけ長く現役選手として活躍し、常にトップスイマーとしてのポジションを維持し続けることが求められます。しかし、水泳はそれが非常に難しいスポーツの1つであると考えられます。

②大会の時間・頻度の問題

水泳のシーズンは夏です。日本選手権のように夏の大きな国際大会の選考会を兼ねる大会は別ですが、それ以外の大会はほぼすべて、夏が本番のスポーツです。そうすると、夏には毎週のように目玉の大会があっても、冬にはほとんどない、という状況になります。さらに、野球やサッカーは週に何回も試合に出場してファンを魅了するプレーを見せることが可能ですが、水泳の場合は、1つの大会に向けて何か月も準備・調整をしたうえで臨み、0.1秒を争うスポーツであるという性質上、月に何度も大会に参加すれば、後半の大会はパフォーマンスが落ちてきてしまいますし、そのような姿をファンも望まないでしょう。

つまり、年に数回の大きな大会に出場するだけで「プロ選手」と名乗れるのか?仮に名乗れたとしても、本当にパフォーマンスを発揮できない「プロ選手」として認められるのか?という問題があります。

③媒体価値の問題

前段で申し上げましたとおり、水泳は大会が年に数回であり、1シーズンを通じて毎日のように大会を開催し、ファンにみてもらえるような体制を作るのが難しいスポーツです。

野球やサッカーのように2時間も3時間も試合を中継するような競技であれば、媒体としての価値が高いといえます。例えば会場の看板広告なども、放映時間が長ければ長いほど露出機会(=見られる機会)も増えますし、TV放映の場合も、長ければ長いほど、CMを入れる回数も増えてきます。

しかし、競泳競技は種目にもよりますが、1〜2分程度でレース自体は終わってしまいます。選手入場時のジャージやゼッケン、インタビィー時のバックパネルなど、なんとか媒体価値が出るように工夫していますが、他のスポーツと比べると、どうしても広告媒体としての魅力には劣ってしまうのが実態です

さらに、陸上のスポーツはユニフォーム自体がメディアとなり、各スポンサー企業のロゴなどを掲載することが可能ですが、水泳選手は水着のみ(もちろん、選手入場時やインタビュー時はジャージなどを着ていますが)なので、ロゴ掲載などは事実上困難です。

③日本水泳界の”プロ選手”!?

前述の通り、水泳はプロスポーツとして認識されている競技ではないですが、泳ぐことだけで稼ぐことができるトップスイマーが数人いるので、ここでご紹介させていただきます。選手引退後にコーチや解説者になってお仕事されていケースはもちろん多いですが、ここでは、あくまで「泳ぐこと自体」で稼げる人とお考えください。

北島康介選手(元):コカ・コーラ

この選手を日本で知らない人はほとんどいないでしょう。アテネオリンピック、北京オリンピックの2大会連続で100m平泳ぎ、200m平泳ぎで金メダルを獲得した、日本を代表する有名なスイマーです。実は北島選手が「日本人初のプロスイマー」だと言われております。2005年に日本コカ・コーラと契約し、キャップやゴーグル、水着やジャージに「Coca-Cola」ロゴを担ぐ広告塔になりました。また、もちろんコカ・コーラふくめ、数社のTVCMなどにも出演していました。

萩野公介選手:ブリヂストン

こちらの選手も言わずと知れた、リオデジャネイロオリンピックの400m個人メドレー金メダリストです。実はこの選手もリオ五輪の翌年である2017年に、ブリヂストン社と5年間で5億円のスポンサー契約を締結しております(北島選手の橋渡しとのこと)。

・・・いずれの選手も、オリンピック金メダリストです。
企業に所属しながらお給料をもらいながら水泳を続けている選手は複数いますが、いわゆる「スポンサー契約」ではないため、「社会人になっても泳げる環境を与えてもらっている」という状態に近いといえるでしょう。

④賞金が出る大会(国内)

①コナミオープン

2020年1月に開催された競泳のコナミオープンで新たに賞金制度が導入され、注目されました。世界記録を樹立した選手に3,000万円、日本記録を樹立した選手には500万円を賞金として贈呈するというものです。賞金といっても、優勝者にいくら、2位の選手にいくら、というものではなく、新記録樹立に対する「ご褒美」に近いものだと感じます。

②北島杯

コナミオープン同様に、世界記録で100万円、日本記録で10万円を賞金として贈呈するという大会です。新設された大会且つ開催される時期が1月ということもあり、自由度&エンタメ性の強い大会ならではの取り組みであると感じます。

③日本選手権・日本オープン 

2020年4月に東京オリンピックの代表選考会として開催予定であったら日本選手権でも賞金制度が導入される予定であったが、開催延期となった。

海外ではもっと高額賞金のレースも多く、欧州の企業家が立ち上げたISL(国際水泳リーグ)という組織が賞金レースを中心とした水泳のプロスポーツ化を目指す組織に非常に近い。

⑤水泳を”プロスポーツ化”させるためには

季節性の高いスポーツであること、レースに調子のピークをもってくるのが難しいという、水泳特有の問題はどうしようもないという前提で考える必要があります。

一言でいうと、スポンサーが広告出稿したいと思えるメディアとして仕立てることが最優先だと考えます

今までは掲載困難であった選手の上半身に広告クリエイティブを投影したり、決勝に残った選手によって広告主が入札形式で瞬時にその選手のジャージに出稿できるような仕組みなど、もっと競技自体にエンタメ性をもたせる(=媒体面としての魅力を増す)ことが、「水泳レースを必ず見てくれるファン」を増やすことにも繋がるのではないでしょうか。

とにかく、

ファンを増やすこと

メディアとしての価値があがる

スポンサー企業も注目する

という構図を作るため、日本水泳連盟はもちろん、北島選手を中心としたスイマー有名人がエンタメ性を合わせて盛り上げていって欲しいです。